走りを封じられた子供の運動会。そのとき芋太郎は何をする!?

これが保護者対抗リレーだと!?芋太郎のストロングポイントが全て潰された…

昨日、長女の幼稚園の運動会があった。

3か月のランニング期間にあたる運動会、芋太郎は何気に楽しみにしている部分もある。

それなりに走りこんでいる時期なので、他のパパさん達に比べると目立てる可能性があるからだ。

というわけなのだが、黙ってこれを見て欲しい。

一周200mもないような園庭でこのイベント満載感!

完璧にランニング関係ねぇ!

走力関係ねぇ!

それどころか、痩せこけた芋太郎を貶めるがごとくスタート直後に台車に20㎏の重りとか…

マットの上で得意技?

そんなの一般の中年が隠し持っていると思うか?

麻袋に入ってぴょんぴょんジャンプなんて、ケガのリスクが高そうでメチャクチャやりたくない。

この紙をもらった瞬間、芋太郎は完全に萎えた。

芋太郎的見せ場はゼロ!

狙いはココしかない!しかし、芋的葛藤も…

走ることでの見せ場はゼロであることはもはや仕方がない。

それでもあきらめきれない芋太郎はココに注目した。

何かできるとしたらココしかない。

一応芋太郎は、中学、高校時代の体育の授業でハンドスプリングまではできた。

ハンドスプリング…

できるか?

足は鍛えているが、腕は全く鍛えていない。

前日の夜、腕がどのくらい体を支えられるか試してみた。

壁を使っての倒立を試みたが、あっけなく潰れた。

壁にもたれかかっての頭と2本の腕の3点倒立を見て、子供たちが「スゴイ、スゴイ」とはしゃいでいたのが唯一の救いだ。

たぶんこの倒立なら、妻にでもできるような気がするが…。

これはハンドスプリングはヤバい。

下手すりゃ肩とか痛める。

こんなところで怪我して、ただでさえ限りなく赤信号のハーフ90分切りの可能性をゼロにしてしまうのはバカだ。

「やっぱり、普通に前転にするわ。」

妻にそう伝えて前日の夜は布団についた。

いざ本番…やるしかない!

何にしても競争と言うのは、独特の緊張感が漂っていて燃える。

こんなお遊びリレーでも、保護者の列に並んでいると「やってやるぜ!」感が沸き起こってくる。

それは芋太郎だけじゃなく、到底運動をする服装ではないパパ、腹にスイカ3個分くらい入れてるんではないかというパパ、「私全然ダメだよ~」とちょっと若返ったテンションのママ、みんなそれぞれが競争モードに上がってきていて面白い。

芋太郎は前から4,5番手くらいに並んだ。

前に並んでいるパパ、ママを観察する限り、まあ皆、前転確定の香りがぷんぷんする。

ギリギリでも側転くらいだろう。

ハンドスプリングをかますような感じの人はいない。

芋太郎も今日は勝負をしない。

つつがなく前転をして終わりたいと考えていた。

が、やりやがった…

別のクラスの第一走者のパパが、完璧に崩れ去った精度が著しく低いハンドスプリングをかました。

もはやハンドスプリングになっていなかった。

普通に尻がついて、ズザザザザザァ―となった。

メッチャ勢いがついた前転と言った方が適切かもしれない。

怪我のリスクが半端なく高い感じのヤツだ。

しかし、観客が沸いた。そして、芋太郎の闘志に火が付いた。

やる、芋太郎はやる。

ハンドスプリング一択、決定!

メッチャ勢いがついた前転をかましたパパは、それでもビビりが入っていた。

マットに向かう直前、スピードが明らかに死んだ。

スピードが死ぬと腕への負担が大きくなると、芋太郎は独自の物理計算から導き出した。

スピードそのままでツッコんで、恐れずに踏み切って回転すれば、腕への負担が限りなく小さい形で回れる。

芋的コンピュータが完全に突入速度とマットへの突入角度を導き出す。

いや、突入速度、突入角度とか訳の分からないことは関係ない。

成功の答えはケガをも恐れぬ覚悟、これしかない!

メッチャ勢いがついた前転をかましたパパ、ありがとう!

芋太郎はやるよ!

タスキを受け取る。

20㎏の台車を押す、ココはどうでもいい。

こんなところは速かろうが、遅かろうがどうでもいい。

問題は台車を置いた後の直線だ。

台車を置く。

白井健三、行きますッ!

芋太郎は全力でマットに突っ込んでいった。

もはや怪我への恐怖は一切なし。

ハンドスプリング成功後の歓声しか想像していない。

芋太郎が走る、そして飛んだ。

自画自賛するが、芋太郎のハンドスプリングは完璧に決まった。

歓声があがる。

芋太郎はハンドスプリングの勢いで飛んでしまったタスキを忘れて走り出す。

幼稚園の先生に言われ、気づいて取りに戻る。

完璧にタイムロスだが、どうでもいい。

チーム競技としてはあるまじき行為だが、芋太郎は自らのハンドスプリングが成功に終わったことに大満足であった。

最後の麻袋ぴょんぴょんはケガのリスクを恐れ、かなり安全に小刻みにやった。

ハンドスプリングを成功させた芋太郎は麻袋で目立つ必要はないのだ。

リレーが終わり、妻のところに駆け寄る芋太郎。

「俺のハンドスプリング見てた?」

「トイレ行ってた。」

現実は残酷だ。

確実にラン中が1名。オーラが違う…

ちなみに芋太郎チェックは欠かさなかった。

芋太郎よりも強いランナーはいないか。

肝心のリレーがリレーなだけに走力では全くわからなかったが。

しかし、服装、シューズ、体型などから注目のパパが一人いた。

歳は芋太郎よりも5歳くらいは上だろうか。

明らかに体型が締まっている。

靴はミズノの長距離用だ。

来ている服も、幼稚園の運動会にムリにあわせたオシャレ系スポーツウェアではない。

明らかに着慣れている。

おそらく軽くジョギングするとき用か。

それとも、レースの会場に向かう時用か。

何より芋太郎が確信したのは、準備体操の姿だ。

普通のパパたちは屈伸するにも、足を延ばすにも、体が安定していない。

この人は、そもそも周りのペースに合わせないで独自のリズムで屈伸したり、足を伸ばしたりしている。

アキレス腱を伸ばすときなんか、周りのパパたちは重心が落ちてない。

かなり腰の高い姿でアキレス腱の運動をしているが、この人は腰がグーッと下がってアキレス腱を伸ばしている。

そして、芋太郎が最後にこの人がランニング中毒であることを確信したのが。

「すいませーん。空組、一人足りませーん。誰か二回走ってもらえませんかー?」

「あ、はい。じゃあ私走りますよ。」

と、即座にサラッと答えたことだった。

もう、この人にとってはこんな短い距離のお遊びリレー、これっぽちも息が上がらない運動だろう。

いや、この人にとっては運動ですらないのかもしれない。

もちろん、この人の走りも観察したが、やはり長距離ランナーの走り方だった。

全力ではない走り方だが、あの大きな歩幅。間違いなく、芋太郎よりも全然走力は上のランナーだ。

ただ一つ、言わせてもらう。

その人は二回が二回ともマットの上で側転をした。

そこはハッキリ芋太郎の勝ちだ。

芋太郎はハンドスプリングを完璧に決めたのだから。

まあ、その人に言わせれば「何を怪我のリスクを背負ってまで…」という話なのだろうが。

やはりランニング中毒者は、ランニング第一なのだ。

目立つこと第一で、後先見境なくハンドスプリングをかましてしまう芋太郎とはレベルが違う。